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2011年08月21日

福島県前知事の「原子力発電体制」への孤高の闘い

 この本は、福島県の前知事、佐藤栄佐久さんが、1988年から2006年まで、福島県知事を務めている間に、福島にある原子力発電所とどうかかわってきたかを、自分の想いを極力控え目に、事実を丁寧に追いながら記録したものだ。


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 読んで、恐ろしくなる。佐藤前知事は、汚職の疑いで辞職に追い込まれるのだが、どう検討しても「えん罪」である。経済産業省と電力業界にとって「うっとうしい」佐藤さんを知事からひきずりおろすための、でっち上げの「捜査」としか思えない。

 佐藤さんは、県民の不安を取り除くため、原子力発電所の安全性をずっと問い続け、情報をすべて公開させて、県をあげてチェックしようとしていた。原子力発電に疑問を持つ人・危険性を指摘する人からも、積極的にヒアリングを行い、県庁に専門家チームを要請し、簡単には国や電力業界にだまされないシステムを築き上げていく。

 しかし、それだけしても、情報は常に隠され、福島にある原子力発電所でトラブルが起きても、報告するという約束は守られず「内部告発」という形でしか表に出てこない。経済産業相も、手を替え品を替え、国の方針に逆らわないよう圧力をかけて来る。


 そんな中で、原子力発電の廃棄物の処理(例えば、使用済み燃料内のウランなどを再利用するシステム)が実はまったく行き詰っていることや、原子力発電が他の発電方法に対して経費の面で決して優れていない(安くない)ことや、原子力発電所がある地域に落ちるお金は使い道が限られているので公共施設はどんどん立てられるがその維持費は交付されないのでかえってのちのち財政は悪化する(それでまた原子力発電所に頼ることになる)ことなどを次々に明らかにしていく。それを1990年代から訴えていたのだから素晴しい。


 しかし、証拠の改ざんまでして、厚生労働省の村木局長をえん罪に追い込んだ検察の特捜部とほぼ同じメンバーが、佐藤さんを、収賄額0円(つまり得していないのに便宜を図っている)という前代未聞の汚職事件の首謀者に祭り上げていく(現在最高裁で係争中)。

 つまり、原子力発電に逆らう者は、知事とて容赦しないのが、経済産業省+電力業界がリードしている、この国のしくみ、なのだ。米国のCIAや、旧ソビエト連邦のKGB(秘密警察)ばりのこわさだ。私たちは、北朝鮮の独裁体制のこわさをとうてい批判できない。原子力発電の利権構造の強固さは、想像を絶している。
posted by さとる at 23:51| 原子力発電