この宮さん、もともと歌のうまい人で、カラオケに行くと、その選曲の意外さと歌唱力に驚いていたのだけれど、趣味としていたシャンソンに次第にのめり込み、50代に入ってからきちんと習い始め、2004年からリサイタルを始めた。そして2006年には、東京は新宿にあるシャンソニエ「Qui(き)」でプロデビュー。シングルCDも出し、今回で6回目のリサイタルを迎えた。
驚いた。6回目、60代を超えてなお、宮さんは驚異的な成長を遂げていた。ぶっちゃけ、初めの頃のリサイタルには危なっかしいところがあって、ひやひやしながら見ていたのだけれど、昨年から今回にかけての「飛躍」「レベルアップ」は過去最高で、一皮むけて大きな壁を打ち破り、まさにプロのシャンソン歌手にふさわしいリサイタルになっていた。
音程は完璧に安定し、声量も増し、もともと歌の主人公になり切る感情表現はすばらしかったものがさらにバージョンアップ、物語性の強いシャンソンの歌たちが伝えようとする世界を見事に伝え切っていた。聴く私の頭の中に、歌の場面のイメージや、歌の主人公の感情が湧いてくるほどで、強烈なインパクトを持って歌が迫ってきた。
感動したのは、歌ばかりではない。宮さんが、小さい頃からの夢だったシャンソン歌手に50代から本格的にチャレンジして、60代にしてこんなに大きな飛躍ができた、という事実がうれしい。それは、何歳からでも夢をあきらめなければ、夢はかなう、ということを実証してくれたからだ。
もちろんその裏には相当な努力もある。リサイタルで18曲を歌い切るために、歌を鍛え、水泳で体力もつけ、資金も集め、「友だち力」も駆使し、意志をみなぎらせてきた宮さん。その積み重ねが、本格的に花を開き出したのだ。
そうなんだ、自分もまだまだ夢を持っていこう、自分らしく自分のやりたいことをやっていこう、と改めて思えただけでも、雨の中出かけていった意味があろうというもの。ありがとう、宮さん。

選曲や訳詩の選び方も素敵で、今回は20世紀のフランスを代表するシャンソン歌手、エディット・ピアフ(イブ・モンタン、シャルル・アズナブール、ジョルジュ・ムスタキ、シャルル・デュモン、フランシス・レイなどを育てたすごい女性)の特集だったのだが、その中の「愛する権利」では、美輪明宏さんの訳詩を採用して、「男と女が、男と男が、女と女が、年寄りと若者が、異国人同士が……人間同士が愛しあっても、罪ではない……」と人が人を愛することは権利だ、と歌ってくれた。
宮さんもエディット・ピアフ同様、恋多き人で、愛に悩み愛を楽しんで生きてきた人だ。その経験が、歌の随所に顔を出し、歌に輝きを与えている。自分もまだまだ恋をしたくなる。素敵で、元気が出るリサイタルだった。[宮さんのウェブサイトはこちら]