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2009年08月07日

うれし過ぎるアンジェラ・アキの迫力ライブ

 先月(w-inds.)に引き続き、忙しい中の東京国際フォーラム。8月7日、初めて、アンジェラ・アキのライブへおもむいた。


 いきなり最初のMCで、あいさつもそこそこにアンジー(アンジェラ・アキの愛称)は、携帯を切るよりも大事な注意事項があるという。「私のライブ初めての人は?」と尋ねて、半数近くが手を上げると、けっこう多いからますます大事、と注意事項に注目させる。「実はね……私おしゃべりなの〜〜〜」。ずっこける観客。

 そんな感じで気どらない、気さくなトークが随所にちりばめられる。「私からはけっこうみんなの顔が見えてるから、ほら、2階の双眼鏡持ってる○○な人……」。遠い席でも、眼をつぶれば、私がそばにいるように感じられるでしょ、1対1で歌を届けるから、とアンジーは叫ぶ。


 おしゃべりをいくらしても、あっという間に、息も切らさず、正確な音階で乱れない美しい声で、歌に入る。この人ののどはどんな作りになっているのだろう。

 アンジーの声量が会場を圧倒しまくる。「迫力」の源といっていい声の大きさ、それをコントロールしてメロディを紡いでいく唱法の見事さ、曲からあふれてきて会場中にこぼれ落ち続ける彼女の感情。ここまで表現力を持ったシンガーソングライターが、今の日本にいるだろうか。

 CDと違って、ドラムスとベースとアンジーの3人ユニットだから、なおさらアンジーのパフォーマンスが際立ち、CDが物足りなく思えてくる。聴いている側の内面にもうどっかーんとアンジーがしみわたってくる。


 観客席からだと横顔をみる位置にピアノがセットされているので、どんな風に歌うのかと思っていたら、左足を少し前に出し、身体をひねって、1曲の半分以上は、観客の方を向いて歌う。なんて器用なんだろう。おかげで、アンジーの表情からほとばしる、曲への思い入れも感じることができる。

 ピアノの弾き方はもう、カッコいいのひと言! 曲の最後に、ピアノを「ジャーン」と決めて弾いた後、バク転でもしそうな勢いで、イスから飛び出してきて、ステージに着地して(!)ポーズを決めて一礼する。

 穏やかにあくまでなめらかに、あるいは、感情を込めて激しく、自分と一体化した身体の一部であるかのように、自在にピアノを弾きまくる。いちばん激しい時には、右腕を全部鍵盤にドーンとおいて、最大級の音を出すのだけれど、これを一般のピアニストがやったら、まちがいなくピアノが壊れるか、腕をケガするかのどちらかになるだろう。技量の高さにはもうひたすら感心するばかりだ。


 何曲か、曲の作られた経緯を語ってから歌い出すのだけれど、その話がうまいし引き込まれるので、曲の世界にこちらも入りきって、心が動くこと動くこと。よく、曲のつまらなさを、曲解説でカバーするアーティストもいるけれど、アンジーは、自分が言いたいことをそのまま心の中から出てくるままにしゃべっているので、解説と曲は一体化して「自然体」となって私たちに届く。

 自分の失恋した時の気持ちを歌う「ダリア」など、一生の恋人だと思っていた人と別れて、ピアノに向かう気力が何ヶ月も出なかった、時がやっとこさっとこ解決してくれた……そんな語りを聴いていると、アンジーが別世界のスターなどではなくて、私たちと同じように、悩み、苦しみ、歓びも悲しみも含んだ経験をたくさん積み重ねてきていることがわかり、観客席の誰もが、どこかで接点を持てる。

 愛する祖父が、レコーディング中に亡くなったことがきっかけでできた「レクイエム」も圧巻。「ごめんなさい」や「ありがとう」をなぜいうべき時に私たちは言えないんだろう、と考えさせる、アンジーの曲としては初めての10分を超える大作。それでもあっという間に曲は進み、くっきりと私たちの中にプレゼントが届けられる。


 しんどいこと、つらいことをこの、フォーラムの床に置いていってほしい、と訴えるアンジーのMCは、本当に優しい。最新アルバムもツアータイトルも『ANSWER』。一人ひとりが自分なりの「答え」を持って帰ってほしいとも。

 私は、「ごめんなさい、そしてありがとう」ということの大事さ(特に身近なひとに)、そして「心から笑い、心から泣ける活動を」。いろんな仕事や活動をしていると、いつの間にか本来の目的を忘れて、功名心や権力欲やがめつさが出てきたり、自分及び一緒に活動している人(まずそこから、その上で周りの人にそれを広げるのだ)が幸せにならいと意味がないことを忘れたりしてしまいがちだ。

 アンジーの歌たちにあふれる、みんなしんどいけれども、それを超えていける力を持っているはずだし、それが自分の中から湧き出て来るまでは、泣きっぱなしでも落ち込んだままでもいい、今を生きていけば見えてくる……というメッセージを、私なりに感じとっての「答え」だ。


 アンコール前最後は、「手紙〜拝啓 十五の君へ〜」を全員で歌う。事前に歌詞が配られているところが素敵だ。「荒れた青春の海は厳しいけれど」「いつの時代も悲しみを避けては通れないけれど」、「自分の声を信じ歩けばいいの」。だから「笑顔を見せて」「今を生きていこう」……最近、カラオケへ行ったとき私が最後に歌う曲になっている、たぶん、日本のポップス史に残る名曲だ。

 アンジーがリードして会場が歌う。その一体感もしびれる。隣にいる自分の友だちも、歌っている。逆の隣の知らない人も歌っている。それだけで、じーんと来るほどの気持ちになる歌だ。


 そんな感動ばかりでなく、アンジーのサービス精神は旺盛で、「勝手に英語でしゃべらナイトコーナー」では、ビートルズの“Hey Jude”を取り上げ、歌詞の意味を解説し、どうしてこの曲が歴史に残る名曲になったかを分析する。

 人の名前がタイトルに入っている、歌い出しが“Hey”と呼びかけになっている、の2点がポイントなのだそうだ。そんな要素がある名曲を歌って紹介してもくれる。前者の例に「与作」(北島三郎)が出てきて観客はおおよろこび。その両方がある曲の例が「ねぇ、ムーミン……」これも大受け。

 でも細かい気遣いもあってね、「ムーミン」を紹介する前に、若い世代が知らなかったらごめんね、そしたら今聴いてってね、と何度もわびを入れてから、おもむろに「ムーミン」を歌い出す。東京(今彼女が暮らしている、会場が最大)ということで、アンジーは超ハイテンションになっていたのだけれど(だから少しすべり過ぎのところもあった)、繊細な人がらがうかがえてうれしかった。


 その他にも、「ANSWER」という曲の中に、「友だちと恋人を 足してそれを2で割ると 答えはあなたなんだと気がついた」という歌詞があるのだけれど、ここを公演地ごとに替え歌にしてくれる。東京の象徴は何かなぁ、という「模索」トークがあって、結局「歌舞伎町と隅田川を 足して……」と歌われた。

 アンコールでは、必ず古めの歌のカバーを1曲入れるのが恒例らしく、今回は、LINDBERG の「今すぐ Kiss Me」(1990年)。その時にハプニング。なんと会場に LINDBERG が来ていると、アンジーが紹介。本当にメンバーがさりげなく客席で見ていた。

 アンジーが初めて見たライブが、LINDBERG だったそうで、その時から自分がステージで歌えるようになるまでに、長い年月がかかったけれど、今こうして歌えていてうれしい、それも LINDBERG が来ているところで歌えてうれしい、と素直によろこんでうるっとするアンジー。


 デビューまでにものすごく時間がかかったアンジーだからこそ、それまでの経験を歌にし続けられるし、人間の心のひだがわかった歌を書くことができる。表現したいことがとめどなく出てくる。それがライブでは、もううれしすぎるくらいに、泉のように湧き出してきて、私たちを癒してくれる。その上最高のエンタテインメントなんだから、もう申し分なしっ!

 アンジーから出てくる「気」の温かさと力強さは本物だ。私も、ライブで出した「アンサー」を、さらにライブにも行き続けながら、実践していきたい。
posted by さとる at 22:21| 私を支える歌