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2009年04月10日

剛紫アルバム「美我空」のビガク

 堂本剛の新しいプロジェクト、剛紫のアルバム「美我空」(シングル「空」と同時発売)を聴いた。正直言って「好き嫌い」が分かれる、つまりメガヒットするアルバムではない。


 シングル「空」同様、東儀秀樹さんの笙・篳篥がフィーチャーされ、尺八も加わったインストゥルメンタル曲「美 我 空」(字と字との間が半角空いている)でアルバムが幕を開ける。楽器は古いものでも、刻んでいるのは、堂本剛がずっとこだわり続けている「ファンク」。

 そしてその後しばらくは「空」と同路線のバラードが続くのでどうなってしまうかと思うが、中盤からはファンキーな曲も混ざり始め、最終的には、バランスのとれた、今の「堂本剛」をまるごと表現したアルバムになっている。

 ヴォーカルが以前にも増して繊細で、歌詞がややシンプルになったぶん、一音節にもありったけの想いと力を込めている感じで、アルバムを聴き終わるまで緊張感が続く。その意味で、聴きごたえはたっぷりあり、静かな満腹感を抱ける。


 問題は歌詞だ。「リアルを…光りを……真っすぐに君に捧げたいんだけど 時代はそうさせないかも知れないな…」(「TALK TO MYSELF」)「愛は優しいから 僕に黙って死んだよ」(「愛詩雨」)「愛したいよ でも愛せない愛もある」(「綴る」)など、今の状況や人間関係を悲観的に見る視点がくり返し出てくる。

 それに堂本剛が自問自答する形で、「ありのままに生きて死を迎えればいい」(「素敵な詩 孤独な詩」)「あなたのことだけ愛していたい」(「雨の弓」)「明日より僕を信じればいい」(「綴る」)など、スピリチュアルな境地が綴られていく。

 そして最後の2曲で、「愛を死なせるな 唱え唱えろ Go FUNKAFULL!!!」(「FUNKAFULL FUNKAFULL」)「新たな Purple Stage を…生み出す必要があるわ 誰もが 世界が。」(「Purple Stage」)とファンキーにメッセージを伝える。この2曲をライブで長いヴァージョンにして会場をあおることが予想される。


 ここまでは、今までの彼の音楽的指向の延長線上にあるから、理解できるし、「愛」を信じていたくなる「気」を、穏やかにたおやかに伝えてくれるから、心はまさに「浄化」されていく。

 でもそのプロセスが……。今までよくキーワードにしていた「宇宙」が今回はほとんど出てこない。「Raindrop Funky」で「ふと手に入れた この宇宙漂ういまをいつまでも記憶していよう ふたりで」と出てくるくらいだ。代わって「日本」なのだ。

 「叶え Key」では、「何時の日かは 消えていく」この身体なのだけれど、「NIHONJINさ 素晴しいこの身体」でもあって、「人生一度きり 毎日一度きり」「今日も、そっと生きたい。」と結ぶ。タイトルがそのものズバリの「NIPPON」では「これからもたくさんの愛しているを見守ってくれNIPPON…」とまでいう。


 なぜいま「日本」に何かを託すのだろうか。いったん宇宙まで広げた彼の世界観を、再び身近な「くに」のレベルまで引き戻したのにはどういうわけがあるのだろうか。「歴史」というタイトルの曲もあるように、そしてシングル「空」でも表されているように、過去から続いている「大事なもの」が意識されているように感じる。

 そして最終曲「Purple Stage」の最後に「今日も そっと生きている…。」と言葉を置く。「叶え Key」の中のフレーズをここでくり返すということは、この日本でこそ「そっと生きよう」と言いたいことになるよね。


 そんなに難しくアルバムを聴かなくたって、と思う人もいるかもしれない。しかし彼自身は聴く人らそこまでを求めている気がする。もちろん音を身体で感じながら、だけど。だからそれに応えたくなってしまうのだ。

 彼の「ビガク」は、でも、やはり抽象的過ぎる気もする。で、どうしたらいいの私たち、ともなる。それは自分で考えて、も彼の基本姿勢だけれど、「日本」がひっかかって今回は素直になれない。

 ライブへ行ってみるしかないかな(って、チケットは当選したので実際に行って来ます)。