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2009年03月27日

大野靖之@発展途上[後編]

 東京都品川のグローリア・チャペル(キリスト品川教会)で3月25日に行われた大野靖之さんのライブを報告する。


 今回はまず大胆な変化があった。これまでライブのたびに歌っていた、亡くなったお母さんや家族のことを歌った歌を完全に封印したのだ。

 これはとても納得がいくことだ。もともと「歌う道徳講師」(学校で道徳の授業を担当して全国を回り、その回数は400回を超え、行っていない県もあと4つになった)という枠にははまりきらない器を持ち、生きていく中で曲をつむいでいくのがシンガーソングライターなのだから。

 そして、とても華やかでエネルギーあふれるライブが出現した。


 いきなりインディーズアルバムからの「仲間讃歌」を、バックの6人(ギター、ベース、ドラム、キーボード&コーラス、バイオリン2人)の作り出す「厚い」サウンドに乗せて、激しく歌う。

 続いてメジャーアルバム「僕が今 出来ること」から5曲を立て続けに強力なアレンジで歌う(「愛の唄」「うさぎ」「心のノート」「歌になるかな」「心の扉」)。個人的には時折サウンドが厚すぎて、魅力の源である大野さんのヴォーカルが聞き取りにくくなるのには一工夫あってほしいと思った。

 でも、バックバンドにしっかり向かい合って拮抗して、ヴォーカルとしての存在感を際立たせていることは確かで、改めてヴォーカリスト・大野靖之の魅力を再確認する。


 それに続いてまだCD化されていない曲が2曲。「永遠に恋をしよう」「とわ」。特に前者は大野さんのピアノとバイオリン2人だけとで歌い上げる。この美しさは絶品だった。大野さんに与えられた声質はやはり、かけがえのないものだ、と今さらながら感じ入る。


 ここで最近のライブで恒例のカバーコーナー。何と今回は秋元順子の「愛のままで」。この歌は実はかなり難しいのだが、その圧倒的なヴォーカル力には脱帽、と言いたくなるほどうまくて気持ちがいい。身体の中に彼の声からアルファ波がぐんぐん入ってくる。やっぱしすげーな、この人。


 この後の後半6曲も新鮮だった。「ロックします!」と宣言して、ギターの後藤さんもアコースティックからエレキに持ち変え、ドラムスはさらに強くなり(今回セットがバカでかかった)、シャウト系の歌唱を見せてくれる。大野さんの引き出しはまだまだたくさんあるのだ。

 「Thanks For Being Free」はインディーズアルバムからで、めったに歌わない曲。これを選んだところに試行錯誤したいと言う大野さんの想いがぐぐっと現れていて、楽しく歌う姿がうれしい。

 続く「美しすぎる命たちへ」「陽だまり」もアレンジがたくましく、その迫力と注がれたエネルギーに圧倒される。


 学校ライブでも、ギターを誰かに持たせて(「それで信頼感を作るんです」)みんなで歌う「ともだち」をはさんで、まだCDで聴けない「生きていれば」「光射す方へ」の新曲で終わる。

 「生きていれば」の歌詞は見事で、MCをはさんでの「光射す方へ」は前編で書いた通り、今の想いを大野さんが凝縮してぶつける。

 アンコールは定番となった「また逢える日まで」(ネット配信中)。卒業ソングとして作られ、さよならだけど、生きてるからまた逢えるね、と始まりの歌、希望の歌にもなっている。癒される壮大なバラードだ。


 途中から気付いたことがある。大野さんが歌う時の姿勢が変わったと感じた。心構えではなく文字通り、「身体」の構えが今までと違う。何かの剣法を身につけて、敵に対峙した時のように身構えているようにみえた。立ち位置、手足の使い方、目線……闘い挑戦するものの姿勢だ。

 それに応じて、発声も唱法も微妙に変化している。まるで自分で自分を再構成しようとしているかのようだ。声質も少しだけど骨太になった気がする。

 本当に大野さんは、変身中であり、模索中であり、進化中なのだ。そしてそれは「終わり」のない旅でもある。その求道者的ストイックさが、自分に厳しくなりすぎないか心配だったりするけれど、前編にも書いたとおり、彼に任せるしかないことは彼に任せてしまおう。じっと見つめていく、曲を聴いていく、私が出来るのはそれだけなのだから。大野靖之@発展途上、それでいい。

posted by さとる at 00:01| 大野靖之