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2009年03月08日

アンジェラ・アキのアルバム「ANSWER」は懐が深い、奥も深い

 心に浮かぶ自分のさまざまな想い、そこから真摯につむがれる歌詞と美しいメロディ。アンジェラ・アキ「ANSWER」は、自在な表現に酔える会心の「名作」だ。


 2005年にメジャーデビューして以来、3作目のアルバムだけれど、デビュー時の緊張した構え(1作)→メジャーになったことでの模索(2作)、と来て、いろいろな呪縛から解放されたように、いい意味でやりたい放題に作り込んでいて、本領発揮、面目躍如だ。

 前作では、収録曲のメロディがやや似通っているものもあり、正直少し飽きる感じもあったのだけれど、「ANSWER」は、どの曲もメロディのメリハリが強烈で、13曲全曲が個性を主張して輝いている。おまけにポップで、すぐ覚えられるメロディラインがどの曲にも必ず含まれている。気持ちいい。


 おまけに彼女が描いている世界が多彩でまた深い。逃げ出してしまいたい愛、友だちと恋人を足して2で割る愛、ダリアを見て思い出す初恋、遠距離に負けまいと車をかっ飛ばす愛、天国へ行く前に母と恋人に改めて感謝と別れを告げに行く愛……。彼女自身の経験がどんな愛も懐深く包み込み、それが優しく繊細にしかし大胆に表現される。

 「黄昏」では、DV を受けて結局別れながらも、「古い荷物」を手放せないでいる女性を、厳しいことばで、しかしそれゆえにとって温かく描いている。この包容力と想像力はすごすぎる。

 愛の歌だけではない。毒リンゴを隠し持ち味方のふりをしている人がたくさんいる世の中で、メガネを自分を隠す道具に使わざるを得ず、でもそれを外して「ファイター」になって大切なひとを奪い返せ、と檄を飛ばす(その曲「ファイター」がアルバムのラスト)。アンジェラ・アキの世界観や人生観も惜しげなく見せてくれる。


 洋楽のカバーが2曲入っているのだけれど、「天国への扉」(ボブ・ディラン)「ウィ・アー・オール・アローン」(ボズ・スキャッグス)のどちらも、聞き流すと彼女のオリジナルかと思うほど消化されていて、新たな情感をひき出すことに成功している。

 この選曲を考えても、テーマの自由さを考えても、シングル1曲のみ・タイアップなしで勝負に出たこと(それはかつては当たり前のことだったんだけど)でも、彼女が全力でこのアルバムに自分の世界を込めたことがわかる。


 じっくり聴いていると魂が浄化されて行く気さえする。声をめいっぱい張り上げることが少ない彼女だけれど、芯にはものすごく「気」がみなぎっているのがわかるからだ。その「気」がこんなに伝わるシンガーソングライターもめっきり少なくなった今、このアルバムを聴けてよかった、と安堵さえする。改めて日本の音楽に希望を持てたりさえする。

 それでも、発売後1週間の売り上げは10万枚に届いていない。シングル「手紙 〜拝啓 十五の君へ〜」がロングセラーになっていて、紅白歌合戦でも大きなインパクトを残したのだから、アルバムをもっと聴いてほしいと切に願わずにはいられない。

 「リフレクション」という収録曲にあるように、「あなたは誰かのリフレクション 誰かの心を映している」わけで、このアルバムには「自分が映っている」はずだから。


 ※私の知り合いで音楽アナリストの臼井孝さんも、このアルバムを絶賛しています。こちら[2009年1月19日の記事]か、こちら[1位のところ]のページからぜひ読んでください。また、臼井さんが編集した素敵なコンピレーションアルバム「エンカのチカラ」も注目です。近々改めて紹介します。






posted by さとる at 00:17| 私を支える歌