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2008年07月23日

こわくて深いウエンツの鬼太郎〜「ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌」

 暑さと仕事の合間に「ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌」をパートナーと観てきた。かなり長く「ゲゲゲの鬼太郎」、とりわけ「お父さん」(目玉おやじ)のキャラクターが好きで、どうしても観ておきたいものに入るからだ。


 面白かった! 決して「子どもだまし」なところがなく、ストーリーや台本もよく練られていて、伝えたいテーマも直球勝負、昨年のほぼ同じキャストによる第1作に比べて数段グレードアップしたのではないか。

 何よりも「こわい」。各場面の構成やそれを盛り上げる音楽や展開が、物語を重厚にしている。さらに、キャスティングの妙を楽しむ余裕などないくらいスピーディで、話に引き込まれていく。蛇骨婆(妖怪の名)が佐野史郎だったなんて、エンドロールでやっと「えーっ」と思ったくらいだ(怪演!)。

 「墓場鬼太郎」というオリジナル中のオリジナルがテレビで放送されたせいもあってか、鬼太郎誕生のシーンまで挿入され、鬼太郎が幽霊族の末えいであることが、ストーリーの大事なカギも握っている。


 ウエンツ瑛士の演技も板についてきて、前作では「鬼太郎」を演じている中に「ウエンツ」が顔を出すことがあったけれど、今回は鬼太郎になり切っていて「ウエンツ」を感じさせない。あえて類型的に言えば、前作ではアニメの鬼太郎より明るかったのが、今回はアニメよりもこわさが増して「妖気」が漂うようになった。

 鬼太郎や他の妖怪たちの演者も声も変わっても、永遠に不変なのが「お父さん」。今回も田の中勇が、息子に並々ならぬ愛情を注ぐ目玉おやじをカッコよく決めていた。

 もちろん目玉おやじは CG なのだけれど、存在感は圧倒的だ。もっと活躍するシーンがほしかったほど。とりわけ今回はキャラクターに対する CG や着ぐるみを減らしたそうで(パンフレット)、ほとんど役者がそのまま妖怪を演じているから、その中で違和感を感じさせないのはもっぱら田の中勇の個性的な声によるところが大きいと思う。


 今回はテーマも明確で、冒頭から「人間」不信におちいっていて、積極的に人間を助けようとしない、「らしくない」と猫娘に言われる鬼太郎がいる。

 それでも事件に巻き込まれた女の子(かえで)と交流しているうちに、その子に裏切られそうになりつつも、誰かを助けるのに「理由なんかいらないんだよね」と鬼太郎が気付く。

 かえでも、人間に裏切られて1000年間も恨みを呪いに変えて復しゅうをしようとして来た妖怪の気持ちを和らげようとするようになる。愚かな人間が妖怪にしてきた仕打ちを反省しながら。


 妖怪にも徹底人間不信派がたくさんいる。その中心にいる、ぬらりひょんの策謀をも、妖怪も人間もいっしょに生きていけないものかという鬼太郎たちの想いが砕いていく。ぬらりひょんは、憎しみだけで決して許し合えず戦争を続ける人間の象徴に見える。

 そうは言っても、人間と妖怪と、お互いの相互不信がイッキにこの映画の中で解けるわけではない。しかし、鬼太郎やかえでの葛藤を通じて、希望を感じることはできる。それでもふたりはラストシーンで「別れ」なければならない。

 思いのほか「重たい」映画だった。エンドロールが終わってから、鬼太郎とお父さんが、さりげなく「ま、これから何とかなるだろう」という意味のセリフを言って映画が終わる。絶望の中の希望。それでもあった方がいいに決まってる。

posted by さとる at 23:53| WaT