無料 アクセス解析RMT

2008年03月28日

大野靖之、プロとして立つ

 いろいろあって無力感にさいなまれていたひとりの男が、「何とかやってみよう」と思って帰って来るのだから、ライブの力は大きい。グローリア・チャペル(キリスト品川教会/東京都品川区)で行われた大野靖之さんのライブのことだ。

 アルバム発売日の翌日から2デイズ。絶妙のタイミングで行われたライブは、大野さんが自身のブログでつづっている言葉「僕はライブは基本だと思っています。目の前にいる聴いてくれる人のために、心を込めて愛を込めて歌うことは、とても自然なことです。聴いてくれる人がいるから音楽は生まれるし、奏でるのです」の通り、アルバムとは違った、大野さんを「感じる」ライブだった。

 大野さんは最初に、学校ライブで「プロみたい」と言われたけれども、「プロですっ!」と話して笑いをとった。

 しかし今日のライブは、それが冗談でなく、プロとしてパフォーマンスしようという大野さんの意気込みが強烈に伝わってきた。


 まず 顔が違う。本当に不思議なもので、メジャーになっていくと顔や身体から特別な輝ける「気」が出てくる。「オーラ」と言ってもいいい。デビュー当時の、ちょっぴり不安げな表情はほとんど見られない。

 MC は飛躍的にうまくなり(学校ライブ300校で鍛えられている!)、たくさん笑いを会場に湧き起こし、ちゃんとメッセージも語り、みんなに拍手させたり歌わせたりと会場を乗せるのも「熟練」してきた。

 大野さんが自分の家族、とりわけお母さんを歌った歌たちは、敬けんな教会の「気」の中で際立って気高く聞こえた。「闘志」を内に秘めた唱法は、ライブでも「穏やか」であるがゆえに「伝わり」、終了後は、初めてライブにきた人たちが、誘ってくれた人に感激の言葉を述べているのがあちこちで聞かれた。


 曲の構成は、アルバムから9曲、シングル曲「頑張れなんて言えないよ」、大野さんが講師をしているアットマーク国際高校の学生と一緒に創った「マイステージ」(これも CD 化してほしい)、インディーズ時代のアルバムから「仲間讃歌」「明日へ漕ぐ舟」……。

 そして、尾崎豊を聞いてシンガーソングライターになりたいと思い、その尾崎豊がさだまさしから学んでいることを知ってさだまさしを聴くようになり、という説明を付けて、さだまさしのカバー「奇跡〜大きな愛のように〜」。全14曲は、心の洗濯におつりが来るくらいだ。


 大野さんはブログにこうも書いている。「ライブは人間を試されます。もちろん歌唱力や完成度は必要だけれど、ライブに足を運ぶ人は、歌うその人の人間を感じたいんじゃないかな」。

 まさにその通りで、全14曲の中に、「大野靖之」が、その今までのライフストーリーが、ぎっしりつまっていた。

 だからこそひとつ気になることがある。


 14分もあるので、メジャーでは CD にするのは難しいかなと思っていた、でもあきらめていなかった、そしておまけにさだまさしの編曲をしている渡辺俊幸さんにアレンジしてほしいとお願いしたら叶った、だから夢は口にすれば叶うんです……と熱い MC の後に、何度聴いても感動する「22歳のひとり言」。続いて「仲間讃歌」で終わり、アンコールは「明日へ漕ぐ舟」。

 インディーズ時代の2曲を終わりに持ってくるところに、何かを感じてしまったのは考え過ぎだろうか。そしてアルバム全10曲の中で、これまたインディーズ時代の「弱虫な時代」だけが歌われなかったのはなぜだろうか。

 この最後の3曲の時が、歌い方も少し昔を思い出させる気合いが入り、MC も飾りが取れて「素」が顔を出し、大野さんらしかった。
※アンコール曲は「また逢える日まで」でした。おわびして訂正するとともに「こちら」の記事も読んでください。

 もちろん私がこう感じることに、ファン心理特有の「変わってほしくない」願望がひそんでいることは確かだ。それでも、あえて思う。例えば、MC で他のアーティストが使う、受けるための「常とう手段」は使ってほしくない。もっともっと大野さんらしい MC があるはずだ。

 さらには歌い方も曲の作り方も、全ての表現法において、本当に「プロ」になるための厳しい模索がさらに続くということが予想される。

 大野さんは途中で、自分はミュージシャンというよりはメッセンジャーで、その手段が音楽なのだと語った。「プロ」のメッセンジャーになってほしいし、そのための大事なプロセスとなるライブだったと思う。いろいろ書いたけど、やっぱり。カッコよかったよ、大野さん!

posted by さとる at 00:07| 大野靖之