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2008年03月23日

悲しすぎるたいやきくん

 1976年に超大ヒットした、子門真人「およげ!たいやきくん」が3月5日に再発売されている。昨年末から全国のゲームセンターのクレーンゲームの景品に入れた「たいやきくん」のぬいぐるみが大ヒット、関連グッズも発売されることになったのをきっかけに、レコード会社のポニーキャニオンが再発売を決めたもの。

 ポニーキャニオンは、盛り上げるためにギネスに申請をして「日本の最も売れたシングル・レコード」に認定された。実際『オリコン』集計で453.6万枚売れているから、すでに500万枚は売れているだろう。

 今回の発売後も順調に売れていて、『オリコン』のシングルランキングでは32位→22位と上昇中で、まだまだ上がりそうな勢いだ。


 実は1992年にも再発売されているが、この時はカップリング曲が違うなど、オリジナル盤の再現とはほど遠かった。今回は、カップリングも、なぎらけんいち「いっぽんでもニンジン」でオリジナルと同じ(実は最初は両A面)。そしてジャケットやおまけのぬり絵までオリジナル盤を再現、さらにはこの曲を流していた、フジテレビ系「ひらけ!ポンキッキ」で使われたアニメも DVD として収録されている。

 これだけおいしい仕様で、歴史に残る曲となれば、シングル盤コレクターとしては、買っておくしかない。さぁ、聴くのが楽しみだ。あ〜前置きが長かった。


 ところが、久しぶりに聴いた「およげ!たいやきくん」なのだけれど、アニメともども懐しさは満点だったが、心がいっこうに弾まない。儲け損なった子門真人の心境のように物寂しくなってしまった(こんなに売れると誰も予想しておらず、印税契約でなく「買い取り」だったために、子門真人には歌唱のギャラ5万円しか入らず、大もうけしたのはポニーキャニオンだけだった)。

 当時はあまり考えずに、ただただヒットのデカさに圧倒され、あまりに耳に入りすぎてすぐ飽きてしまったので聴き込むことをしていなかったからだろうか。いま聴くと歌詞があまりに切なすぎて落ち込む。


 毎日鉄板の上で焼かれるのがイヤで、海へ逃げ出し、「とってもきもちがいい」「こころがはずむ」生活を得るけれど、エサがなくなって、釣り針に引っかかって釣り上げられ、釣ったおじさんに食べられてしまう……。

 私は、ハッピーエンドが全ていいなんて思っていないし、子ども向けの歌や話に残酷さがある程度入っていても人間の本質を考えることにつながるなら構わないと思うけれども、あまりにこれでは希望がなさすぎないだろうか。

 いま自分がいる状況に安易に抵抗しても、結局生きていけなくなり、ムダなんだ、そんなメッセージしか読み取れない。「自分らしさ」を選ぶなんて危険だぞといっているようにも感じられる。「やっぱりぼくはタイヤキ」でしかない……[カタカナになっているのは歌詞カード通り]。


 そういえば、この曲を聴いていた当時も、マイナー調のメロディーにもなじめず、「何となく」違和感を感じていたことを思い出した。食べられたところで、余韻も後奏もなくぷつっと終わってしまうのも、あんまり「きもちがいい」ものではなかった。

 時代は経済の高度成長がオイルショックなどでかげりが見えていたけれど、それでもサービス残業して企業に忠誠を尽くして働いてそれを乗りきってしまおうと国がやっきになっていた時だった。

 もしかしたらこの歌を通じて、自由に生きる夢は夢でしかない、というあきらめや絶望がじんわりと日本に定着していくきっかけになったんじゃないだろうか。


 私は買った CD シングルを、棚の奥の方にしまった。

posted by さとる at 23:33| 音楽の周辺